はじめに

ガラスをつくる

「ガラスをつくる」という仕事を始めて10年たちました。

ちょうど区切りがいいのでここで少し文字にしておこうと思います。

いったいどうやってそんなに長い年月がたったのか、ただの一度も落ち着いたことのないめまぐるしい日々でした。技術は続けただけの進歩があったと思いますが、まだあっちを見てもこっちを見てもわからないことだらけです。それでもここまでやってきたなかで見つけたことを大切に、次の10年を始めたいと思います。

 

 工房名はglass studio 206番地とつけました。まだ制作を始めたばかりの妻と連名です。制作方法も、持っている世界もまるで違う2人ですが、一つのものをつくっている、という思いを忘れずに活動していきたいと思っています。

 

 ガラスをつくる場面を初めて目にしたのは、父と母が暮らしていたノルウェーです。次々と表れる深い森と湖の先で見た職人たちの生み出すものたちやその動きが、ずっと後に自分の仕事を決めるきっかけになるとは思いもせず、飽きずに見ていました。

 

 自分のつくりたいガラスは、変な言い方かもしれませんが、「あこがれている日本」を感じさせるような作品かなあと最近思うようになりました。

 子供の頃、海外の日本人社会という特殊な世界にいたことも関係あると思います。昔は周囲の目からの恥ずかしさもあったのか、日本という国が大嫌いだったのに。

 

 今の自分は、日本に残る美しいものがたまらなく好きです。日常で触れることはなくても、まだ遠くのどこかで延々と引き継がれ残っているもの。時間。空気。それらを取り込んで、「粋」、と言われるようなものをつくりたい。「粋」というものがなんなのかいまだ少しわかりませんが、、。

 手にとってくださった人にもどうかそれを感じてもらえるように、心を込めてつくりたいと思います。

 

 最後にガラスはなんといっても透明が好きです。ただこれをストレートに見せるのは好きでない。だから今おもしろいと思ったことすべてやっています。いつかはまるっきり透明なものをつくりたいと思っていますが、、。どうなるかわかりません。

 

 これからいろんなひとに見てもらい、あれこれ言ってもらい自分の中に取り込んで吐き出したいと思います。思わぬものができると期待して。

 

                           2009.9.3 橋村大作